celebes2005-09-21

南スラウェシは、ちょうど乾季と雨季の変わり目。午後2時を過ぎると生暖かく強い風が、東から西に吹き荒れます。マカッサル海峡の漁師さんたちも出漁を取りやめていました。中秋の名月を過ぎてから、ようやく風も落ち着き、そろそろなまこ漁の船が出漁の準備を始めています。
9月4日、松井和久(アジア経済研究所)と浜元聡子(京都大学東南アジア研究所)は、遅沢克也(愛媛大学農学部)の帆船チンタラウト号に乗って、バランロンポ島、バディ島、コディンガレン・ケケ島などを、実験航海しました。お天気にもめぐまれて、同行のUNDPマカッサル事務所のイダさんと、日本工営マカッサル事務所で働くテリーさんご夫妻のほか、テリーさんの事務所でインターン研修をしていた広島大学大学院の学生さん2名、バランロンポ中学校の先生2名、浜元の下宿の近所の子ども4名が帆船航海実習をおこないました。
船の上で魚を焼いたり、錨を上げたりおろしたり、ボートに乗ったり降りたり、みんな楽しんで、あまり調査研究という雰囲気ではありませんでしたが、めったなことでは乗ることもなくなった、南スラウェシの伝統的帆船ピニシに乗ったことが、みんなの思い出になったようでした。
さて明日から5日間、浜元と今年度からスラウェシ科研に参加することになった長津一史(京都大学東南アジア研究所)は、木造ボートジョロロに乗って、パンカジェネおよび島嶼部県(パンケップ)での調査に出発します。おりしも、ちょうど2週間後にはラマダン月(断食月)を迎えます。各島では、その前に、結婚式をおこなってしまえとばかりに、ほぼ連日、どこかで新しい夫婦が誕生しています。断食月は、日中、食事ができないうえ、結婚式や婚約などを契るのにはふさわしくない月なのです。潔斎してすごすべき月だからです。明日からの調査でも、おそらく、立ち寄る先の島々で、かならず結婚式が見られそうです。過去10年で、結婚の婚資は、2倍以上になりました。一見、経済状況も向上したかのようにみえますが、10月からの石油価格値上げなど、人々の実質的な生活を逼迫する変化のほうが目に付きます。学校教育、公衆衛生、生活環境の改善など、おおきな変化は目に付きにくいとはいえ、それほど変わったとはいえません。地方分権の時代に入ってからすでに5年以上、目には見えないけれども、人々の生活にはやはり変化はあったのでしょうか。海の自然資源利用をとおしてそれを調べる調査は、ようやくパンケップ県での臨地調査に入ります。