南スラウェシのブギス=マカッサルの人々は、固有の文字文化を持っています。a.i.u.e.oの母音5つに、23の子音を組み合わせて表記します。
日本語にあっても、ブギス語、マカッサル語にない音については文字に表すのが難しいですが、似た音に置き換えて表記することができます。


こちらは、「Ki-Yo-To Da-i-Ga-Ku」となります。
a音を基本形として、i-u-e-oは、基本形の左右に「・」や「<」や「>」をつけることで表すことができます。タイプするときは、実際には、「K-Yo-To D-i-G-Ku」としています。

ブギス語のフォントのダウンロードは、こちらから。 → http://www.travelphrases.info/gallery/Fonts_Buginese.html

1990年代半ば頃から、Muatan Localという地方語の授業が、小・中学校、高校でおこなわれるようになりました。マカッサル市内の学校では、さまざまな地方語を話す児童や生徒がいるため、地方語クラスが設置されない学校もあるとのこと。村落部などで、ほとんどの児童や生徒がほぼ同じ地方語を話す場合には、このクラスが設置されています。
現在では、日常生活の場面で、ロンタラ文字を使う人はほとんどいません。私が見た中では、小さな商店のおばあさんやパサール(市場)で穀類や乾物を売っている人が、売り上げや貸し付けを小さなノートにロンタラ文字で記入していたのが印象的でした。曰く、今時の人はこのような文字を読めないので、機密情報を書き込むの便利とのこと。
話される言語としてのブギス語やマカッサル語も、このごろでは外来語(英語やインドネシア語)からの単語の借用が増えてきて、若い人たちの言葉はよくわからないというお年寄りもいます。言語は日々、変化するものだと思いますが、文字文化はどのような形で残されていくのでしょうか。現在、南スラウェシ州内で発行されている日刊新聞の中に、地方語で書かれた紙面はほとんどありません。ブギス・ポストという不定期発行のタブロイドが発行されていたこともありますが、この時の印刷文字は、ブギス語をアルファベット表記したものでした。ロンタラ文字の印刷は、決して技術的に難しいものではないはずです。ロンタラ文字の印刷物が、ふつうに書店に並ぶ日が来ないかなと、密かに期待しています。