celebes2005-08-09

昨日に続き、南スラウェシ州テンペ湖の風景です。暑いので、せめて水場の写真に涼を求めたいところです。(写真撮影:浜元聡子)
写真の家屋は、以前にも紹介したように、乾季には水位が下がる湖岸から、水深がある湖の中央部へ家屋を引っ張って来ることができるようになっています。筏の上に家が建てられています。
テンペ湖の主要な漁獲は、大型のコイやフナ、ライギョソウギョ、ウナギ、テナガエビ、もう少し大振りの淡水エビ(名前がわかりません…)などです。もっとも、これらの収量は決して潤沢であるとは言えません。海岸沿いの養魚池(エンパン、タンバックと呼ばれる汽水帯域の干満差を利用)では、ミルクフィッシュ(サバヒイ)を中心に、テラピア、エビ、カニなどが養殖されています。最終的な漁獲から得られる現金収入を見た場合、どちらが多いかは市場からの距離や需要曲線の具合によって異なります。比べても意味はありませんが、初期投資という点を見てみれば、テンペ湖での淡水漁業の方が、どちらかといえば、気楽に始められる分、若干、有利な感じがします。
しかし実際には、湖の中は、どこで漁撈活動をすべきかという区画割りが、細かく定められています。淡水漁業に従事する人はもちろん、漁獲だけを得て売りさばきたいという人は、一定の区画に対して出資します。この区画は、タケを割いたものを使って、湖の一定の区画を囲い込んだものです。出資者自身が出漁してもよいし、誰か別の人と契約を結んで出漁してもらっても構いません。囲い込んだ区画の中に、淡水漁の漁獲対象となるサカナ類を追い込んで、漁をおこないます。
このような漁のあり方が、今、変わりつつあるのは、湖の水位の低下が原因です。流入河川によって運ばれてきた土砂が湖岸などに堆積し、湖の面積が縮小しつつあり、サカナが好んで住むような水草が生えた曖昧な湿地帯が減少しつつあるのです。土壌流出がなぜおきるのかといえば、山間地での森林伐採であったり、土地利用方法がさまざまに転換することによって、山の保水力が変化するからだと考えられています。この問題はすでに地元行政が関心を持ち、さまざまな観点からの研究をおこなってきました。またハサヌディン大学の研究者も、すでに幾度となく大型プロジェクトを組み、テンペ湖水系をめぐる自然環境および社会経済生活の変容に関する研究を重ねてきました。しかし、画期的な観点からの調査結果は、いまだ出されていないのが実情だとのことです。
スラウェシ科研では、テンペ湖水系の自然資源利用に関する調査はおこないませんが、南スラウェシ全体の自然資源利用に関するさまざまな文献資料および住民・行政の活動に関する情報収集を続けてきました。新聞や雑誌のクリッピング、その他の行政資料の収集などです。
トラジャ地域(山)とスプルモンデ諸島地域(海)との比較調査が、スラウェシ科研の中心的課題となっていますが、スラウェシ島で散見されるさまざまな自然資源利用をめぐる社会経済的変容にも、アンテナを張り巡らせています。このことが、また次の活動に繋がることを考えています。