• スプルモンデ班日本側班長の遅沢克也が、今年の夏の活動を振り返って書いています。

9月末に研究室の藤田(M1)と本多(4回生)*1が調査を終えて無事帰国、今後研究室の体勢を整えてアジス君*2ともども全力でスラウェシ研究に取り組みます。以下のことお伝えします。
1)マンダールのタンガタンガ村で制作していたサンデック*3は、Cinta Bahari と名づけられました。7月中旬に命を授かり(進水)ました。2)この船は、松山の有志の資金支援によって完成。所有者はタンガタンガ村のハルナ氏ですが、日イ双方の若者の帆走トレーニングに使用することが主目的になっています。帆走トレーニングに使用しない期間は、ハルナ達が漁に使います。皆様の学生の帆走訓練・海洋実習などの際にも利用できるようにしておりますので、どうぞご利用下さい。連絡はLembaga Perahuの方へ。
3)本多はこの船に同乗し、今年度のサンデックレースに参加。好成績を収めたそうです。本多はこのCinta Bahari 乗組員8名にほぼ2ヶ月間密着し、この8世帯を足がかりにタンガタンガ村の生活と生業を描きます。これが彼の卒論です。彼は愛媛大学農学部の大学院へ進学し、来年度はこの8名の猛者達と本格的な帆走航海に挑みます。本多はものすごく成長しました、というよりも、違う人間になって帰ってきました。ぶちゃむくれの白けたピンとのずれた学生が、マンダールの漁師の顔つきになったのです。精悍そのもの。顔がまったく変わりました。海に特化したマンダールの猛者達にそしてマンダールの海に感謝、感謝です。
4)藤田は、シンジャイのロンポン漁の網元にアプローチし、上手く、彼等の懐に入ることに成功しました。今、Labuhanbajoを中継港として、その南方海域では、国際的な回遊魚の争奪戦が繰り広げられているのだといいます。主戦は、シンジャイ漁民とフィリピン漁民との争い。そうした動きの詳細を聞き取りで把握してきました。彼は、今M1ですので、来年度は彼等に同行して調査を展開する予定です。実は、この網元の住んでいるのがなんとAmriさん*4の調査地トンケトンケ。藤田曰く、「トンケトンケの住民の大半は漁師で、その8割までがロンポン漁に従事。フローレス海やその南方海域を視座に入れないと、シンジャイの自然資源管理の把握は無意味だ」。

以上近況をお伝えしました。調査概要、今後の調査予定、成果物への意見等は、次回に譲ります。

*1:遅沢の学生。どちらも愛媛大学に所属。

*2:スラウェシ科研の研究協力者。

*3:sande': 西スラウェシ州の主要民族マンダール人の伝統的木造帆船のこと。

*4:スラウェシ科研の研究協力者。2005年3月に京都大学で学位を取得して帰国。