celebes2006-06-10

海図の話の続きです。
ブギスーマカッサルの海の民といえば、自由自在に東南アジアの海を往来してきた人々というイメージがありました。かれらの航海技術についての論文や図書(Bugis Navigation / Gene Ammarell 1999)などもあります。マカッサル海峡の島に住み始めた頃に、まず最初に船乗りや漁師さんから聞きたかったことは、夜、どんなふうに星を見て船を走らせるのか、ということでした。
近年では、夜に船を出すようなタイプの漁をする場合には、GPSと海図を駆使するのが当たり前なのだとのこと。海図はまだしも、GPSは、当時、盛況であったハタ科のサカナを一挙に活魚輸出する業者が、地元のボスに買い与えたものだということがわかりました。わたしがトコ・アコールというお店を教えてもらったのも、実は、島のボスからでした。
一方で、伝統的なシングルアウトリガーの小さな帆掛け舟で、毎日、自分の食べる分プラスαの漁をする漁師さんたちは、その日の風、雲の位置、光の具合、海の色、海鳥の飛び方などを見て、どこに向かって舟を出すかを考えるのだそう。GPSや海図を使うようになると、こういう自然の様子から、サカナの居場所を考える力が鈍ってしまうのだとのこと。
どちらの漁撈活動にもメリット、デメリットがあることとは思います。いつもGPSを使っている人が、ときにはのんびりサカナを釣りたいと、自分のシングルアウトリガーを取り出して来ることがあります。どちらかひとつしか生業活動の手段がないというのではなく、いくつかの選択肢の中から、その日の気分で海と関わる。このことが、ブギスーマカッサルの人々の海との関わり方なのだろうかと思ったものでした。