一昨日、3月31日は、イスラーム暦では預言者ナビ・ムハマッドの生誕日、マウリッドでした。
南スラウェシでは、自分が礼拝に行くモスクに、供え物を持って行きます。スプルモンデ諸島では、5リットルから10リットルくらいの大きさのプラスチックのバケツ一杯に、ミニャ・カド(ココナツ・ミルクで炊いたモチ米のごはんの中に、アヤム・カンポン(地鶏)を揚げたものが中に隠されている)や儀礼用菓子、果物などが詰められています。バケツはいわば、おせち料理における重箱のようなもの。これをサロンや風呂敷、ビニールなどで包みます。それらの結び目のところに、このバケツを用意した人の名前を書いた紙が送り状のように留められています。名前の他、「なにかひとこと」が書かれていますが、これはアラビア語あるいはロンタラ文字で書くのが慣例。
モスクに集められたバケツは、モスク運営委員会の人がきちんとリストアップしたのちに、比較的貧しい世帯の人へと分配されます。モスクに集まっているこどもたちにも、それとは別で、一人分ずつに適量に分けたものが配られます。島によっては、各世帯の主婦がバケツをモスクに持って行き、イマームによる読経を受けたあと、そのまま持ち帰るところもあります。その後は、近所の人に配ります。近所の人も持ってくるので、いわば供え物の交換。バランロンポ島では、ムラユ人としては初めてのシャー・バンダール、ダト・パベアン(Dato Pa'beang)の末裔であるムラユ人協会のメンバーが島を訪れ、島のモスク運営委員会の人と一緒に、タンバリンや太鼓、弦楽器などで音楽を奏でながら、バラサンジを謡う年もあります。
マウリッドの前の月、サファル月には、マンディ・サファルがあります。親戚や近所どうしが誘い合って、干潮時にしか顔を出さないような砂地だけの島を目指して船を出します。全員が、七夕の短冊のような紙片に、自分の名前と「なにかひとこと」をアラビア語かロンタラ文字で記したものを用意していて、これを海に流すのです。日頃は海水浴などしない女性たちも、このときは腰のあたりまで海水に浸かって、存外に楽しそうにしているのがおもしろい光景。なにかひとことは、クルアーンから引用してくることもあるし、好きな言葉を書くこともあるとのこと。一年の健康と安寧を祈願するための儀礼とのことです。